中央学院 000100040=5
明徳義塾 300000013×=6
8回表、それまで安定していた明徳市川投手が3連続四死球で一死満塁のピンチを迎えると、中央学院4番高鹿に2点タイムリーを浴び同点。中央学院はさらに7番西村のタイムリーで一気に逆転。
粘る明徳はその裏二死から1点を返すと、1点を追う9回裏も二死から走者を2人ため、4番谷合が値千金の逆転サヨナラホームラン。甲子園通算50勝を達成した名将が何度も「野球は怖い」と振り返った試合は、劇的な決着となった。
■「1番ピッチャー大谷」の奇襲実らず
中央学院はエースの大谷を1番起用。抽選会後の合同インタビューで「神宮大会のビデオ貸して」と軽口をたたかれるなど、前哨戦で馬淵監督に手も足も出なかった相馬監督が思い切った策に出た。
初回、その大谷はインコースまっすぐを詰まりながらライト前に運び出塁。次打者の送りバントで先制のチャンスを作ったが3番、4番が凡退し無得点。裏のピッチングでは先頭にフォアボールと次打者送りバントをフィールダース・チョイスでいきなり無死一二塁のピンチを迎え、二死から2本のタイムリーを打たれ3点を先制される。この初回の攻防と、その後走者がいる場面で大谷に回ったのが1度だけだったことを踏まえると、奇襲は失敗だったと言える。
■最後の打席で意地を見せた両4番
中央学院は秋季大会であまり出番のなかった高鹿選手を4番起用。ところがこの高鹿選手が第一打席から明徳市川投手のスライダーに全く対応できない。第一打席は4球すべて外角スライダーで三振。第二打席、第三打席は1球ずつ見せ球のまっすぐがあったが他はすべて外角スライダーで三連続三振、大ブレーキとなる。特に4回の第二打席は1点を返して無死三塁の場面。明徳義塾内野陣は定位置で1点やむなしという陣形にも関わらず同じような空振りを繰り返したのは残念だった。第三打席には毎日放送で解説していた帝京・前田監督に「ちょっと自信がない顔してますねぇ」と言われる始末。
そして迎えた第四打席、市川投手がいきなり制球難で迎えた一死満塁のチャンス。初球の外スライダーを踏み込みスイングすると、三遊間を抜ける同点タイムリー。終盤でようやく結果を出した。相馬監督が代打も考えたというこの場面(当然だろう)、3連続四死球で明徳バッテリーに余裕がない状況だったとは言え、恐れず初球から踏み込んでスイングしたのは立派だった。
一方、明徳4番の谷合も、4打席大谷に抑え込まれていた。特に2点を追う8回裏には、無死一塁から4-6-3の最悪の併殺打。それでもそこから味方打線が粘り繋いで、1点ビハインドの最終回二死一二塁で回ってきた第5打席。期するものがあっただろう。初球はアウトローまっすぐ、ボール。2球目は高めのまっすぐをバックネットにファール。そして3球目。キャッチャーのサインに首をふり、投げ込んできた大谷のアウトコース高めの球を完璧にとらえて、バックスクリーンへの逆転サヨナラホームラン。最後の最後に仕留めて試合を決めてみせた。
最後の場面、もちろん打った谷合は立派だが、1-1からサインに首を振ってまっすぐで押そうとした中央学院・大谷。試合後のインタビューで「後悔している。勝ち急いでしまった」と言っていたが、その通りだと思う。最初の打席から試合を通じて様々な伏線を張りつつ、打者との駆け引きをしながら抑えようとするスポーツで、最後の最後で力任せの勝負を挑み裏目に出てしまった。
■馬淵監督リニューアル(?)
昨年春に早稲田実に打ち負け、夏に前橋育英投手陣に4安打に抑えられ、「打てないと勝てない時代になった」と話したという馬淵監督。今年は打ち勝つ野球でと臨んだ甲子園で、指揮官の覚悟が見られたのが最終回2死無走者の場面だった。先頭から2打者連続で芯で捉えたあたりも野手の守備範囲でツーアウト。後がない状況で迎えた明徳2番・田中。2ボールとなったところでベンチを見てうなずく田中は、3球目のまっすぐをスイングしセンター前ヒットで出塁した。これまでの明徳であれば、この場面3球目はウェイティングである。が、積極的にスイングし次打者につなげた。そして大谷は次打者初球のスライダーを引っ掛け死球、次打者谷合にホームランを浴びることとなった。
もともと緻密な野球で甲子園で勝ち星を重ねてきた名将が見せた野球の変化。次戦以降もより攻撃的な采配が見られるかもしれない。