乙訓 001000000=1
三重 10100000×=2
初出場でベスト8進出を目指した乙訓の戦いが終わった。3回裏の三重・浦口のソロホームランの1点を最後まで取り返せず、今大会初登板の福田を崩せなかった。
紙一重の勝負だった。初回の三重の4番・大川のピッチャー返しを乙訓先発・富山がとれずにセンター前に抜けていったのに対し、3回表の乙訓一死二三塁から4番・宮田のピッチャー返しを三重・福田が止め、送球間の1点に抑えた。わずかそれくらいの差だった。私学の強豪校と熱戦を演じた乙訓高校ナインには心からの拍手を送りたい。
その上で、乙訓の8回表の攻撃にあえて触れたい。
1点を追う乙訓は、この回先頭の1番大上がヒットで出塁し、2番大西は1ストライクからの2球目を送りバント。見事一発で決め、一死二塁の一打同点のチャンスを作った。この場面、何も間違いではないのだが、リスクを取ってエンドランを仕掛けてはどうだったろうか。(カウントによっては考えていたかもしれないが。)送ることによって同点には近づいたが、それと同時に、守る三重高校側に平常心を取り戻させる1アウトを献上した。さらに三重は後攻。「追いつかれても攻撃が1回多い。打者一人ずつとゆっくり勝負だ」と考えられる。
こうなるとあとは投手対打者の個の勝負となるが、公立高校の選手が強豪私学の「全てを捨てて野球に賭けている人たち」にその勝負を挑むのは、かなり分が悪いだろう。この試合も結局その後、ピッチャーゴロで飛び出した大上の挟殺を逃れる走塁もあり、一死二三塁とチャンスを広げたが4番宮田は三振、5番中川は一ゴロで同点機を逸した。
こういう展開を見ると、やはりチームで攻める・プレッシャーをかけることの重要性を感じる。要は「こいつら次は何をしてくるんだろう」という気持ちにさせ、相手の土俵で戦わせないのだ。その積み重ねが、ボール一個分投球が甘くなる、野手が打球処理を焦る、ということにつながる。
そして甲子園でそういう雰囲気を作るには、やはり観客をその気にさせることだ。長年高校野球を見続けているネット裏の観客のおじさんたちに「このコらを勝たせたい」と思わせるのは、やはり終盤のファインプレーや、リスクをとった攻撃・守備を成功させたときなのである。
もし試合終盤に一点を追う公立校の2番打者が初球エンドランを決め無死一三塁のチャンスを作ろうものなら、ネット裏の観客は一斉に乙訓に肩入れしていただろう。そして劇的な逆転劇を期待して、ブラスバンドの応援にのって手拍子してみたり、相手投手が一球ボール球を投げるだけで拍手してみたりするのである。こうして出来上がっていくのが漫画「砂の栄冠」でいう宇宙空間なのである。
乙訓高校の設備が私学並みに整っている、元プロの指導者もいるといっても、やはりどこまでいっても公立。練習時間も限られた環境で「野球バカ」の私学強豪校の選手たちと対峙していかなくてはならない。夏も見据えて甲子園での勝ち方を考えるのであれば、終盤でリスクを取って「膠着状態を壊しにいく」ことも一つのオプションとして考えてはどうだろうか。