九州勢が躍進した、渋い大会だった。
センバツのベスト4、智弁和歌山・常総学院・PL学園・桑名西はいずれも予選で敗退。4校とも夏に戻ってこれないのは現在に至るまで、この年が最後という珍しい状況である。
筆者はその春、小学校卒業時に京都から埼玉県浦和市に引っ越しており、大宮県営球場に埼玉県予選の4回戦だか5回戦だかを中学野球部の友人と見に行った。もともとの目当ては前年甲子園準優勝の、土肥擁する春日部共栄だったのだが、第一試合で登場した浦和学院の応援と強打線を見て、あっと言う間に浦学ファンになってしまった。京都西のオリジナル応援曲を聴いて育った筆者にとって、浦学サンバ始めほとんどをオリジナル曲で構成する同校の応援はなんとも魅力的だったのだ。
その浦和学院は決勝で春日部共栄を7-0で破り、優勝候補の一角として鈴木健以来の出場。1回戦の相手はセンバツベスト8、好投手水谷擁する姫路工だ。試合当日、筆者は野球部の練習のためテレビ観戦できなかったが、監督の計らいで、練習終了時にラジオをつけてくれた。それがなんと1-3とビハインドで迎えた9回表に、浦学が3得点をあげて逆転するところだった。1年生の代打・石井義人(元巨人など)のセンターオーバーのツーベースから打線が目覚めた、見事な逆転劇だった。裏を無失点で抑え4-3の劇的勝利。ラジオに集中し、トンボがけの手を止めはしゃぐ子供たちに監督の雷が落ちた。
余談だが、水谷投手の息子さんが姫路工のエースとして2018年の西兵庫大会準優勝。時の流れは早いものである。
嵐山の美空ひばり記念館で監督におみやげを買ってくる条件で、翌日から野球部の練習を数日休む許可を得て、京都にある母親の実家へ。京都の友人と樟南・横浜・天理が登場する大会6日目を見に行った。福岡・田村の黄金バッテリーが残る樟南は順当に初戦突破したが、紀田(元西武)擁する横浜はまさかの那覇商に苦杯、天理も金村(元日本ハム)率いる仙台育英にサヨナラ負け。さらに浦学目当てに見に行った9日目(2回戦)には、浦学が中越にまさかの0-1サヨナラ負け。強打線が鳴りを潜め、わずか2安打で先発木塚(元ベイスターズ)を見殺しにした。
3回戦で西の優勝候補・北陽も仙台育英に敗れ、いよいよ優勝の行方は混とんとしてきたわけだが、ひいきの高校が軒並み敗れてしまったため、正直筆者は甲子園から完全に興味を失くしていた。準々決勝の日が夏休みに一度だけある登校日だったが、惜しいとも思わず登校した。
決勝は優勝候補の中で唯一順調に勝ち上がった樟南と、開幕戦勝利から一気に決勝まで駆け上がった、2年生投手・峯擁する佐賀商の九州対決。ベスト4に3校、ベスト8に4校残った九州勢の躍進を象徴するカードとなった。これはさすがに見た。
樟南圧倒的優位の下馬評をくつがえす接戦の末、佐賀商が同点の9回表に2番西原の満塁ホームランが飛び出し、まさかまさかの初優勝。なんとも渋い大会は最後の最後に激的な展開で閉幕した。