筆者が小4になる春休み、最も強烈に印象に残っているのが松商・上田の完封ショーだった。2回戦から3戦連続で完封し決勝に進んだ。
今振り返ると、倒した相手がすごい。初戦相手の愛工大名電のエースはイチロー。初回に2点を失うも、その後は点を許さず、3-2で競り勝った。
2回戦の天理は前年夏優勝校だ。前年、南とともにツインタワーと呼ばれた谷口がエースとして残り、打線も大宅、大森ら好打者を揃え優勝候補と言われていた。その天理打線を4安打に抑え大会初完封(2-0)。
さらに準々決勝の大阪桐蔭。のちに高校野球界の王者として君臨する同校はこの大会が創部4年目の甲子園デビュー。いきなり仙台育英相手にエース和田がノーヒットノーランを達成し10-0で下すという衝撃のデビュー戦だった。2回戦で簑島を破り初出場でベスト8に進出した大阪桐蔭。しかし夏に猛打で優勝を果たすことになる強力打線も上田を打てず、0-3で完封負け。
準決勝で上田はこれまた初出場でベスト4に進んだ国士舘も1-0で完封。初戦の2回から決勝の初回に点を取られるまで、実に35イニング連続無失点の驚異的な投球だった。
反対の山を勝ち上がったのは広陵。初戦の三田学園戦では雨中の中、大苦戦。8回裏に2点を奪い同点とすると、9回終了時に雨天引き分けとなった。仕切り直しの2戦目を8-2で快勝すると、春日部共栄、鹿児島実、市川を破り56年ぶりのセンバツ決勝へ。
松商学園(旧・松本商)vs広陵(旧・広陵中)とオールドファンが泣いて喜ぶ古豪対決となった決勝戦。上田は連投の疲れか、7回に4点目をとられ1点差と迫られたところでライトの守備に下がった。そして5-5で迎えた最終回二死一二塁。広陵打者のライト後方への飛球を上田が背走するもキャッチできず、劇的なサヨナラ決着。
初出場でベスト4入りした国士舘、市川(山梨)、それにベスト8入りした大阪桐蔭と、初物尽くしの大会で見事優勝を飾ったのは、就任1年で甲子園で初めて指揮をとった28歳の青年監督・中井哲之率いる広陵だった。
なお、センバツ決勝でのサヨナラ決着はその後、2016年に智弁学園(2-1高松商)が果たすまで25年間見られなかった。(夏は85年PL学園以来ナシ)
ベスト8以上に進んだ松商学園、市川、大阪桐蔭、鹿児島実はその年の夏も出場し躍進、大いに大会を沸かせることとなる。伝説の大会へとつながるセンバツ大会であった。