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思い出甲子園(1995年春)

投稿日:2021年1月22日 更新日:

大会前注目を集めていたのが、開幕3か月前に行われた第一回アジアAAA野球選手権大会の優勝に貢献した、福留孝介(PL学園)と澤井良輔(銚子商)、2人の左打者だった。

なんとその両雄が大会初日の第三試合で激突。筆者は翌日からの関西・甲子園遠征に向けてカセットウォークマンを買いたかったので、第一試合の途中で家を出て秋葉原の石丸電気に買いに行き、第三試合が始まる前に浦和の自宅になんとか帰宅。ふぅ、間に合った。

試合は1回表、銚子商・澤井の大会第一号ソロホームランがいきなり飛び出すと、3回には、1-1と追い付いた後、福留のバックスクリーンへの3ランでPLが勝ち越し。戦前の期待をも上回る激戦となった。雨でぬかるんだグラウンドの影響もあり、両校に内野守備の乱れが相次ぎ、取っては取られのシーソーゲームで7-7のまま延長へ。

11回表に銚子商がエース嶋田のタイムリーで勝ち越した後、6番打者に2ランホームランが飛び出し勝負あり。10-7で銚子商が競り勝ち、優勝候補筆頭のPL学園は初戦で姿を消した。

筆者は大会3日目を観戦。震災直後で、阪神電車からブルーシートで覆われた家屋や仮設住宅が見える中甲子園へ向かい、神妙な気持ちで兵庫・神港学園対仙台育英の一戦を見た。試合は神港学園が見事競り勝ち初戦突破。選ばれた兵庫勢3校とも初戦突破するという快挙で、地元を元気づけることとなった。

大会はPLに続き、夏に優勝することとなる帝京や優勝候補・東海大相模が序盤で相次いで敗退。波乱の展開で迎えた決勝は、銚子商対観音寺中央。古豪対初出場校の一戦となった。

香川の県立高校である観音寺中央高校。戦いぶりは異質だった。走者が出てもバントで送らずひたすら強気のヒッティング。強打で、夏に準優勝する星稜・山本や関西・吉年と好投手を打ち崩し、一気に決勝へ。

筆者は久しぶりにネットの映像で決勝戦を見返したが、ゆったりとしたやわらかい打撃フォームから繰り出す、春とは思えない速度の打球。最終的に4番室岡が大会最多安打数(13)を、7番大森は最多本塁打(3)を記録する猛打に加え、エース久保の安定感のある投球。4-0で銚子商を下し、一気に頂点に駆け上がった。

この大会、最も印象深いのが、準々決勝の今治西対神港学園での一幕だ。1点をリードして迎えた9回表、今治西のエース藤井秀悟(元ヤクルト)は、先頭打者への初球にカーブを投げた後、激痛で顔をゆがめる。肘を「やっちゃった」のだ。

2球目。3球目。痛みを気にしながら恐る恐る投げ、毎球ごとにマウンドを下りて顔をゆがめる藤井。ベンチをちらちら見るが、視線の先にいる監督は地蔵のごとく、微動だにしない。表情からは「行けるか?」という心配なのか、「それでも行け」という鬼の命なのか読み取れないが、ただただベンチで固まっている監督。藤井の表情からは、一刻も早くマウンドを降りたい、これはやばいやつだという思いが画面越しに伝わってくる

結局監督が二番手投手への継投を決断したのは、90キロ台の棒球しか投げられない状態の藤井が、先頭打者を四球で歩かせた後だった。なんてぇガーソだ。明らかにおかしい状態で4球も投げさせたのが、二番手投手の肩ができ上げるまでの時間稼ぎだったとしたら、さらに許されることではない。勝利至上主義。一選手が自分のコンディションについて主張することが許されない体制。様々な闇を感じさせられるシーンだった。

試合は直後に神港学園に逆転されるも、9回裏二死から藤井の執念の同点タイムリーで追いついた今治西が、延長13回に相手守備の乱れでサヨナラ勝ち。ベスト4に進出するもその代償は大きく、大会中はおろか、夏の愛媛県大会に至るまで藤井がマウンドに上がることはなかった。

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