パフィーの「これが私の生きる道」が行進曲だった。初日に報徳学園と平安が出るのでそれにあわせて埼玉から京都に帰省し、はじめて開会式を生で見た。当時、たまに行進曲を歌っている歌手が毎日放送のブースにゲストで呼ばれていたので、その日ちょくちょく放送ブースを覗いていたが、パフィーの姿はなくガッカリしたのを覚えている。
大会は、初日から近畿勢が大躍進を遂げる大会の流れを作り出すような展開となった。第二試合に登場した報徳学園が、優勝候補の東海大菅生相手に延長サヨナラ勝ち。1点ビハインドの最終回の先頭打者・代打の選手が初球を完璧なライト前ヒット。これをきっかけに追いつき、延長で勝ったのだが、その代打の選手がヒットを打った後、塁上で関西人らしい派手なおちょけたガッツポーズをするのが格好良かった。
また、この試合でさすが報徳と思ったプレーがあった。二・三塁間で挟まれた報徳学園の走者が、塁間の線上近くに立っていた菅生の内野手に自分からぶつかりにいって派手に転倒。審判は走塁妨害をとった。菅生側は当然抗議するも認められず、走者の進塁が認められた。一緒に見ていた長兄と「せこいなぁ笑、でもうまいなぁ・・・」と思わず関心させられた、THE・関西人なプレーだった。
初日第三試合では平安が登場。90年夏以来、久々の甲子園出場だった。そんなチームに、川口という良い左投手がいるらしい、と期待して見に行ったわけだが、この試合を見られて本当によかった。まず、久々登場の平安、応援をごっそりオリジナル応援歌にリニューアルしてきたのだ。初回、京都西のコンバットマーチを思い出させるなんだかさわやかな曲(https://www.youtube.com/watch?v=3Nd5b6Id8VI)から始まり、得点圏に走者が進むと、今では魔曲として有名になった怪しいボレロ(https://www.youtube.com/watch?v=GngWdZl6wSw)が炸裂。初回のチャンスで初めて流れたとき、「ええ曲作ってきたなぁ・・!」と身震いした。(のちに、吹奏楽の先生がこの大会に先駆け、ラヴェルの「ボレロ」を編曲して用意したのだと知った。そういうところがさすが野球強豪校である。)試合は、3-3同点の8回裏平安の攻撃、無死二、三塁のチャンスから二者凡退で無得点かと思われたところで、川口の女房役山田が値千金の決勝タイムリー。平安が5-3で星稜を下した。この山田選手のタイムリーはその後京都で長く続く「平成・平安時代」の礎となった、本当に価値のある一打だった。
初日に勝った報徳、平安に続き、この大会は近畿勢が大躍進した。実に、出場7校中5校(報徳、平安、育英、上宮、天理)がベスト8入りしたのだ。最近だと2016年センバツで近畿勢4校がベスト8入りを果たしたが、それを上回る近畿旋風であった。
もともと前評判が高かったのが、神宮大会を制し優勝候補筆頭の上宮。おしくも近畿対決で天理に負けベスト4だったが、山田・渡辺・三木と後にプロ入りする3選手に加え主砲の多井、とまさにタレント軍団で華があった。準々決勝のこれまた近畿対決となった育英との一戦は大会を代表する名勝負となった。2-5と3点ビハインドで迎えた最終回に上宮が相手エラーやタイムリーで意地の同点劇。それまで育英の左投手のドロンと大きく曲がるカーブに手を焼いていたが、ようやく最終盤にとらえて追いつくと、延長10回にサヨナラタイムリー。サヨナラのホームを踏んだ三木選手の「よっしゃぉらぁぁぁぁ!!!」という声をNHKのカメラが拾っていたほどの、まさに死闘だった。
そして最終的に優勝したのは天理高校だった。上宮との準決勝を小南投手の好投で2-1で制すると、古豪対決となった中京大中京との決勝を長崎投手の好投で4-1で制し、初めての春制覇となった。非常にレベルの高い2枚の好投手をそろえた、バランスのよいチームだった。
神宮大会準優勝の春日部共栄がベスト8に進出するなど、前評判の高い高校が順当に勝ち、かつ近畿の高校が躍進するという非常に面白い展開の大会だったが、悪天候で4日も順延したのが残念だった。準々決勝の報徳ー平安、中京大中京ー春日部共栄は、降り続く雨の中非常に悪いコンディションで試合を行わざるを得ず、とてもかわいそうだった。報徳ー平安の8回裏平安の攻撃では、1点差無死満塁のチャンスで平安の1番奥井選手が内野ゴロを打った際足を滑らせた結果、3-6-4のホームゲッツーとなり同点のチャンスを逸したシーンがとても印象的だった。相手も同じ条件とは言え、気の毒だった。(夏はその奥井選手が大爆発。夏の準々決勝で決勝タイムリーを打った奥井選手について、インタビューで原田監督がセンバツのこのゲッツーの場面を引き合いに出し、悔しい思いをしていたが、ここでほんとうによく打ってくれた!と感極まって泣いたシーンは平安名場面の一つ)
この年は学校の新学期が始まってもまだ大会が続いており、上宮ー天理の地元ファン垂涎カードの準決勝でも観衆が1万人台と、寂しい大会終盤となった。筆者も高校の入学式のため、泣く泣く準決勝を録画で見届けることになったのはとても残念な思い出だ。